この言葉は、
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
という本からの引用で、引用者は哲学者の鷲田清一さん。
朝日新聞の1面コラム『折々のことば』で取り上げています(2019年7月23日)。
私はこのコラムで本書を知り、興味を持ちました。

書店勤めの長い著者は、夫との生活に破綻後、書名通りの驚きの行動に出るのですが、
「出会った人は不思議にみな人生の転機にあり、
『みんなが不安定さを礼儀正しく交換し、
少しだけ無防備になって寄り添ってるみたいな集まり』に、
世間はそもそもそういうものだったかと思い到る」とありました。

なかなかできる冒険ではありませんが、
彼女には「1万冊を超える膨大な記憶データの中から、
いまのあなたにぴったりな本を1冊選んでおすすめさせていただく」(サイトに書いた登録文)
ことかできる能力と目的があり、それが武器でもあったことは大きいと思います。
そうしたぶれないスタンスがあったからこそ、さまざまな人との出会いのなかでも、
相手を受け入れ、冷静に愉しみながらも、流されずに1年間続けられたに違いありません。

巻末には、本書ですすめた本一覧のほか、
この本を読んだ人にすすめたい本一覧も載っているため、
ユニークなノンフィクション(実話にもとづく物語)として楽しめるだけでなく、
読書ガイドとしても重宝します。

本書は、本好きには有名な花田菜々子さんのデビュー作で、
現在、彼女は東京は高円寺で、蟹ブックスという書店を経営しています。

書名は、これ以上長い本はないと思うほど長いのですが、
本書続編は、もっと長いものでした。
『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた
「家族とは何なのか問題」のこと』です。こちらもおすすめです。

tomeさん