ヴァルター・ベンヤミンの「善き物語とは必ず何かしら有用性を含んでいるもの」という言葉が何度か登場する。私は、村上春樹氏がノーベル文学賞有力と言われ続けていて受賞を逃していることを思い出す。
ノーベル文学賞の受賞者は、文学的に優れているだけでなく、権力や差別などの社会問題に対してメッセージ性や問題提起が含まれている作品を書いている作家が多いので、世界的に広範な読者のいる村上春樹氏でも簡単ではないのかなと推測していたから。(村上氏がそんなつもりで記したのではないにしろ)そんな仮定が、期待され続ける作家の脳裏に一度も過ったことがないとは思えなかったから。
「夏帆」は一目見ただけで吐き気がするくらいグロテスクな見かけのシロアリの女王やありくいの夫婦などが登場するファンタジックでホラーな作品です。「現実」と「非現実」とが絡み合う現代の純文学は、ファンの期待を裏切りませんでした。
みーちゃんさん 男性





