「特攻」に関する本といえば、
その悲痛な心境を綴った『きけわだつみのこえ』がまず思い浮かびますが、
この本は、なんと9回も出撃を命じられて、すべて生還した「不死身の特攻兵」を、
劇作家の鴻上尚史さんが、生前の本人にも直接取材して書き上げた本です。

こう書くと、死ぬのが怖くて逃げ帰ったように思えますが、そうではありません。
いかに相手に効果的にダメージを与え、無駄死にしないかを考えた結果だったのです。

ともすると暗いテーマですが、戦争のリアルが巧みに表現され、
これほど引き込まれて読んでしまう本は、そうそうありません。
『空気を読んでも従わない』鴻上さんですが、あの厳しい戦争のさなかに
最後まで、軍の空気に従わなかった軍人がいたことに感動を覚えます。
ひどいいじめにあっている青年を主人公に、本書のモチーフを現代風にアレンジした
小説『青空に翔ぶ』も書かれています。

tomeさん