富と名声を得ていたトルストイだが、50を境に死への恐怖や、有限である生の意義への喪失から自殺希求が度重なる。
当時のトルストイとその他の学者や金持ちは、彼曰く、肉欲三昧であり、有閑無為であり、寄生虫の如く生活していた。理性で考えれば、生は不合理であり、愚であり、悪であった。
彼は実験科学や形而上学などの知識の世界へ答えを求めたが、死が生よりましであるという裏付けがなされるだけで、理性の上の知識は人生に意義を与えない。
その後、額に汗して勤労している民衆の生活の中に入り、純朴な信仰が彼らに生の意義を与えているのを知る。民衆にとっての神秘的儀式は、人としての一定の義務であり、教会によって伝えられる伝説に過ぎなかったが、トルストイはさらに信仰上の真偽を研究し、神を知ることと生きることは一つであり、神は生そのものであると考える。
快楽主義的な生活により絶望を知り、道徳的な生活により生を取り戻していくトルストイの姿は、現代を生きる私たちにも教訓になります。
みーちゃんさん 56歳 男性





