タイトル冒頭の「匂やかさ」はドイツ文学の泰斗、
手塚富雄先生による評から学んだものですが、まさに
その表現がぴったり来るのがゲーテによるこの教養小説です。

主人公のヴィルヘルム・マイスターが挫折を重ねがら
成長していく物語で、私は45年ほど前の学生時代に
読んで深く感銘を受けました。

とりわけ全8巻中の第7巻の冒頭にある言葉

われわれが出会ったことはことごとくあとを残すもので、
知らずしらずのうちに教養に貢献するものです。

しかし、それを自分にむかっていちいち
釈明しようとするのは危険です。

そんなことをしたら、あなたは得意でなげやりになか、
あるいは意気阻喪して臆病になるかです。

そしていずれにしても将来のさまたげになります。

いちばん安全なのは、目の前にあるもっとも
手近なことだけをやることです。(関泰祐訳)

に心打たれました。

以上は自分が親しんだ昔の訳本から引用しましたが、
現在入手しやすい山崎章甫訳(岩波文庫)も名訳ですので、
とくに若い方にぜひともお薦めします。

ラベンダー・オラフさん 67歳 男性