2019年に『交通指導員ヨレヨレ日記』から始まった三五館シンシャの職業別日記シリーズ。
当初は、こんなに次々とシリーズ化できる予定はなかったようですが、
2025年7月の最新刊は、第23段(コミック版3冊を除く)
『市長たじたじ日記 落下傘候補から5期19年、市長努めました』。
これまで、交通誘導員、派遣添乗員などブルーカラーものが中心でしたが、
近年は、住宅営業マンや保育士(グレーカラー?)などのほか、
翻訳者や大学教授などホワイトカラーものも増えています。
そして、遂に極めつけは、元市長の登場です。しかも、これまでほとんど著者は仮名でしたが、
翻訳者とこの元市長だけは本名で登場。
外務省に務めインドに駐在していた著者は、鎌ケ谷市市長の逮捕・退任を知り、
投票日の1カ月半前に急遽帰国し市長選に出馬
(被選挙権の制約は「日本国籍を有し満25歳以上であること」だけ)。
なんと763票差の僅差で初当選。しかも「落下傘候補」だっただけに、
当然、関係者や市民と、何かとさまざまな事案やトラブルに見舞われます。
しかし、生々しくリアルに、市長の日常や役所の裏側、選挙と政治の裏側などを、
淡々と描き出し、読み物として十分楽しめます。
ときには「ちょっとどうなの?」というエピソードを交えながら、
私人としてのプライベートな部分も披瀝。
このシリースに共通した特徴のようですが、
本人としては書きたくなかったであろうことまで言及されており、興味は尽きません。
本シリーズは3冊しか読んでいませんが、
その限りでは、話の最後には大きな変化が訪れるのは共通。
本書では、任期途中で市長を辞し、衆議院選挙に臨み、あえなく落選。
第4章はのタイトルは「終わり悪ければすべて悪し」。
不遇の4年間を過ごすことになるのです。
しかし、あとがきには、希望の光も描かれており、ちょっとほっとしました。
飽きずに1日でも読み通せる本シリーズ。すでに他に2冊を手を入れ、近々読む予定。
ちなみに三五館シンシャは、
2017年に倒産した出版社三五館の社員だった中野長武さんが設立した出版社。
しかし、本シリーズのほか、『ザイム真理教』をはじめとする森永卓郎さんの著作も多数出版し、
いま一番元気な一人出版社です。
一人でも、ここまでやれるとは、その情熱たるや驚きです。
ネットのインタビューを読むと「一人で好きなことができるから、
ストレスなく楽しい」とのことでした。
tomeさん