主人公は中学生の成瀬あかり。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
と友人の島崎に話すところから物語は始まります。

滋賀県の大津市を舞台に、閉店する西武を惜しみ、
成瀬は毎日取材するローカルテレビ番組に、西武のユニフォームを着て映りに行くのです。

「大津にデパートを建てる」「200歳まで生きる」など大言壮語なのですが、
実際にそれを実現してしまいそうなバイタリティのある成瀬。
「~だ。~だな」と男のように喋り、泰然自若でマイペース、笑うこともなく空気も読みません。
しかし、謙虚で人の話も良く聞き、意見も取り入れる懐の深さが、とても魅力的なのです。

2023年1月発売の本作は、成瀬の中2から高校にかけて、
時間順に話者を変えて5つのエピソードからなる短篇が収録されていますが、
2024年1月発売の続編は、高校から大学までを描く6篇を収録。
続けて読むと、すべてが積み重なって、面白さも広がりと厚みを増し、
第3作が出ることが楽しみになります。

ちょっとラノベ(ライトノベル)風の青春小説ではありますが、
今年(2024年)の本屋大賞受賞作品。
大人でも十分楽しめ、日頃本を読まない人にもお勧めできます。

ちなみに、この成瀬シリーズは次の第3作までは出るようですが、
著者が本当に書きたかったのは恋愛小説。
その後は路線変更しそうですが、
第4作として成瀬の恋愛も読んでみたくなります(第3作でありかも?)

tomeさん