工学博士であり作家としても知られる著者の仕事論。

ともあれ、その内容は終始一般論的な範疇を出ることがない。仕事は慣れるまでつらいが慣れればできるようになるとか。実際は、ある程度仕事ができるようになればもっと難易度の高いことが任されるのが普通だ。とくにホワイトカラーならばそれは顕著だ。いや、最初から見当も付かないようなジャンルの開拓を任されることすらありえたわけで。この辺は教員で作家である著者がそう言う世界を知らない、またはリサーチをしていないからこういう結論になっているのだと推察される。
 ネットの発展で新聞やテレビが廃れるという予測は半分あたり半分はずれている。
 クリエイターは廃れないという予測は、実は外れている。コンテンツが氾濫したことで単価が安くなったことは、本書刊行年の2013年にも見えていなくはなかったのではないか。
 産業革命を含む歴史の考察なども、おおよそ取材やリサーチが足りておらず、読むに足る内容とはいいがたい。
 ともあれ、本書が貴重なのは、十数年前には、作家で工学博士であれば、新書の枠でこういう本の発注があり、新書というレーベルはそれで成立していたという事実である。
 本書はそのことを体現している点で意味があると言える。

やましたさん 男性

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「やりがいのある仕事」という幻想

森, 博嗣, 1957- / 朝日新聞出版 / 2013/05