2026年2月の衆議院議員選挙で、過半数割れをしていた自民党は、
なんと史上最高となる議席数を獲得。
一方、立憲民主党と公明党によって結成された中道改革連合は激減。
いわゆる「リベラル」と言われてきた勢力は、壊滅状態となりました。
そんな状況のなか、今回取り上げるのは『新しいリベラル』という本です。
サブタイトルは『大規模調査から見えてきた「隠れ多数派」』。
発行されたのは2025年6月ですが、もとになった7000人規模の調査を実施したのは、
2022年7月の参院選の直後。
それより以前からリベラルの衰退は言われていましたが、
著者は、立憲民主党や左派的な社会運動を支持している訳でもないのに、
「自分はリベラル」という人は減っておらず、
従来のリベラルに回収しきれない新たなリベラルの意識が生まれているのではないかと考え、
それを調査・分析したのが本書なのです。
その結果、抽出された6つのグループのうち一番多かった(23%)のが「新しいリベラル」でした。
それたけに、リベラルの過去・現在だけでなく、
これからのリベラルを考えるには最適な本といえそうです。
リベラルを語るのに不可分な戦後民主主義は、冷戦の開始とともにその影響を受け、
日米安保条約反対、憲法9条改正反対、天皇制反対(もしくは女系天皇支持)、
従軍慰安婦問題は謝罪・賠償の4つが根幹的な特徴となっていました。
当時は、リベラルではなく、「保守」に対する「革新」の立場として語られていました。
しかし1990年代になり、冷戦の終結とともに、
社会主義・共産主義の影響を受けずに以前から穏健な福祉国家を理想としてきた人たちが、
リベラルとして再発見され評価され、今日のリベラルの源流となっています。
日本社会党で言えば、左派に対する右派の位置づけになります。
また、1996年に結成された当時の民主党が、自身をリベラルと規定していました。
折しも、フランスでは社会党のミッテラン政権が継続、アメリカでは民主党のクリントン政権が発足し、
その政策理念としてもリベラルが語られた時代でした。
日本では、少し遅れて2009年に民主党政権が成立。
この頃がリベラル派政治勢力の全盛期で、以後衰退の一途をたどります。
ひとつには、その後の安部政権が、リベラル的な政策も導入し保守に取り込まれ、
リベラルが見えにくくなったという事情もあります。
また、著者は、ジョナサン・ハイトの『社会はなぜ左と右にわかれるのか』を参照し、
リベラルは「ケア・自由・公正」といったリベラルな価値を支持するが、
「忠誠・権威・神聖」といった保守的な価値は否定する。
これに対して、保守はリベラルな価値を容認したうえで、
保守的な価値を支持するという調査結果を紹介します。
つまり、リベラルな価値は、保守に取り込まれやすいのに対して、
リベラルは保守に反対し批判ばかりする「ノーの政治」にならざるをえないようなのです。
さて、以上は従来のリベラルの話ですが、本書が見いだした「新しいリベラル」とは、
必ずしも著者たちのオリジナルではありません。
1930年代に発祥があり、ケネディのブレーンだったガルブレイスにも見られ、
英国ブレア政権のブレーンだったギデンス「第三の道」に、そのビジョンが描かれています。
弱者救済などリスクに対処する従来の社会民主主義とは異なり、
リスクを産まないようにリスクに立ち向かって挑戦する考え方で、
ひとことで言えば、人に投資する社会的投資型の福祉国家を支持する立場です。
わかりやすく言い換えれば、全世代への教育重視といえるかもしれません。
しかし、戦後民主主義的な価値観には強くコミットせず、従来の「リベラル」っぽくはないため、
多少違和感はあります。
調査の結果、6グループのうち「新しいリベラル」が最多だったとすでに書きましたが、
他のグループは、従来型リベラル(18%)、福祉型保守(16%)、市場型保守(9%)、
成長型中道(13%)、そして政治的無関心(20%)となっています。
新しいリベラルの主要な担い手は子育て世代ですが、
「選択と集中」は望まず、あらゆる人を支援すべきと考えています。
そうはいうものの、自身の政治的立ち位置について明確なイメージはなく、
リベラルと自認していない人も含まれ、
自身の政治的価値観に合致する政党を見つけられずにいるようです。
最後に、新しいリベラルが他グループとの連携により作り出す
「新しい」政治の可能性についても触れていますが、
今回の選挙で、リベラル勢力の結集を目指した中道改革連合の試みは大失敗。
世界情勢が険悪化するなか、ともすると理想主義に走りがちなリベラルの旗色は、
益々悪そうですがが、新しいリベラルは、絶対平和主義には共感しないものの、
軍事的リアリズムは支持せず、非核三原則は支持するとのこと。
自称「リベラル」の私としては、このあたりに希望の光を見い出しました。
tomeさん

