元気が本当にないと笑うことすら辛いもの

 ニーチェの思想については幾多の解説があるので割愛する。
 科学が台頭して神の言葉を騙ること叶わぬなか、人が人として生きる絶望とそこから始まる毅然とした何かを謳ったニーチェ。

 しかしながらこの本の白眉はそのような表面的なことではない。吃音という自らのコンプレックスに悩む著者飲茶氏本人の物語でもあるのだ。

 50音表の一部がランダムに常時塗りつぶされているような感覚で、塗りつぶされていない音で発話を始めないと吃ってしまう。
 そんな中で難聴の同級生が読んでいた本が哲学の本であり彼女に心惹かれた著者が哲学の道を歩む。

 笑うことすら許されない絶望を癒すのは誰かの絶望なのかもしれない。共に倒れないぞと愛する絶望があなたを救うのだ。

鴉野 兄貴さん
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