女性学にも負けない? 当事者研究としての男性学の出発点

とにかくスゴイ本です。
何がスゴイって『感じない男』というタイトルからしても、ある程度は想像がつきますよね。
目次を見渡しただけでも「ミニスカートさえあれば生身の女はいらない!?」
「男にとってポルノとは何か」「私はなぜ制服に惹かれるのか」「ロリコン男の心理に分け入る」など
なかなか刺激的。

これまで、男性論なら数多くありましたが、
学者による学問としての男性学は、ほとんどありませんでした。
しかも、スゴイのは、自分をまな板に載せ、赤裸々に告白しながら、
徹底的に自己のセクシャリティ(性のありよう)について分析していることです。

「これは著者の性の告白本であり、学問にはならない」という意見も実際にあったようです。
しかし、最近では「当事者研究」というアプローチが日の目を見るようになり、
「男とはこういうものだ」という男性論とは一線を画す、
まさに男性による当事者研究としての「男性学」だと感じました。

『感じない男』と言う表現は、著者が自分は感じない男(不感症)である
と言っているように受け止められ、間違いではないのですが、
「男というのもは(女に比べ)感じないものである」というニュアンスも多分にあります。

たしかに、その通りであり、著者のセクシャリティには共感する部分もありますが、
自分は違うと思う点も多々あります。

少なくとも、自分のセクシャリティに違和感を覚える人以外は、
真剣に自分のセクシャリティを考える機会はあまりないと思いますので、
再考するきっかけとしては最適な本として、おすすめできます。

女性学の本(上野千鶴子『フェミニズムがひらいた道』)を読んで、
男性学にも興味を持って手にしたのですが、
著者は、生命学を提唱する哲学者。
本書を読んで、以前から気になっていた著者の代表作『無痛文明論』も買ってしまいました。

tomeさん 男性