ローマ法の権威である大学教授が、中高生に向けて
「法とは何か」を説いた講義の記録です。
中高生に語りかける口調で書いてあるせいか、
読み口は柔らかいのですが、テーマがテーマだけに
難しいといえば難しい。
それでも知的好奇心が満たされるような
ワクワク感を持って完読しました。
興味深いのは、
事例として取り上げた題材の幅広さ。
ギリシャ悲劇から近松戯曲、
ヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』や
現代日本の判例まで、幅広く取り上げています。
事例に通底するのは、人間の愚かさ。
当たり前なんですが、
何千年も前に生きていた人たちも
これまた現代を生きる私たちと同じ人間。
生活スタイルによる価値観の変化は
避けられようもないことなのかもしれませんが、
権力を持った人間の暴走し具合などは、
古代ギリシャの時代から変わらないんだな、
とある種諦めが付きます。
一方で、そこから人間を守るものが法律なんだ、
という希望を持つこともできます。
ここからは個人的な意見になりますが、
「法」と言うのは、人間の愚かさによる
暴走からいかに個人を守るか、考えに考え、
煮詰め切ったものがエッセンス・原理原則として
収斂結晶したようなものだと思います。
時代の要請により変える必要性が出てくることは
あるのかもしれませんが、先人からの智慧の結晶を
変えることの重みは、自覚せねばならないな、
と思わされました。
sluníčkoさん 45歳 女性