ツルゲーネフの『はつ恋』は、女性は自分の女性的価値、男性は情欲の達成を重要視していることを改めて思い起こさせてくれる。

16さいの主人公ウラジミールの内面は、非常に率直に雄弁に描かれているので、彼のことは容易に理解できるが、相手の年上の令嬢ジナイーダを取り囲む他の男性陣は、ジナイーダの自尊心の象徴か、道化師のようにしか描かれない。
ウラジミールはまだ幼く、未来は全くの未知数故に恋に溺れても自尊心を見失うことは無いが、ウラジミールの父親はジナイーダとの関係性こそ読者に多くを委ねているが、傷付けられたであろうことは何となく想像出来る。

要するに、まだ16さいのウラジミールには21さいのジナイーダの女心は複雑すぎたのであり、ジナイーダには取り巻きの大人の男性の情欲と言ったものは、上辺でしか理解することは出来なかったのだろう。
しかし、この『はつ恋』は最後まで詩的で瑞々しい表現で貫かれていて、それがこの青春の物語に一層の深みを与えているように思えます。

みーちゃんさん 55歳 男性