芥川龍之介の『蜜柑』は教科書に取られることも多い短編小説ですが、授業で習うときは意欲も削がれがちなので、改めて読み直すことをお勧めします。と言ってもあっという間に読める掌小説ですが。モヤモヤと陰鬱な思いを持ち続ける知識人の心象風景と目に見える風景が辛気臭くシンクロしてはじまるが、そのうちイライラが募るような出立の娘が乗ってきてまたイライラ。それがみかんのオレンジにパッと切り替わり、エンディングを迎える。綺麗な起承転結と色彩に打たれる作品。

poohymcaさん 55歳 男性