ナチスといえば、ユダヤ人を大量虐殺したことは誰でも知っていますが、
「実は良いこともしたのだ」という斬新な話を聞くと「へぇー」と思ってしまいませんか?
「アウトバーンを建設して失業率を低下させた、有給休暇やレジャーの機会を拡大した、
結婚資金貸付制度ほか手厚く家族支援をした」などなど。
著者2人はドイツ現代史の専門家。そうした「良いこと」を子細に検討し、
一見、先進的な政策も、様々なまやかし・不正・搾取・略奪と結びついており、
そこに犯罪的本質があることを検証します。
近年は「政治的な正しさ」(ポリティカル・コレクトネス=ポリコレ)に対する反発もあり、
ナチスも「良いこと」論が注目されがちですが、
今後の社会的歯止めとして、やはり正しい共通認識を持っている必要がありそうで、
本書はそのための一助となります。2023年12月に発表された『第14回 紀伊国屋
じんぶん大賞』で1位も獲得しています。
ちなみに、ドイツでは、授業で発言したり、タクシーを止めたりするときは、
人指し指を立てて手をあげます。
「選手宣誓」のように手をあげることは「ナチス式敬礼」とみなされ、
法律でも禁じられています。
ドイツでは、それほどまでに過去の犯罪にいまでも正面から向き合っています。
tomeさん