年金をもらう歳になって、普通なら、いまさら自己啓発書は読まないのですが、
たまたま坂口恭平『生きのびるための事務』という著者名と書名を新聞広告で見て
「おやっ・あれっ」という違和感を感じ、購入・読了した次第です。
著者は、早稲田大学の建築科出身ながら、
建築はせず、画家・音楽家・作家ほか、多彩な活動をしています。
『TOKYO 0円ハウス0円生活』『独立国家のつくり方』といった本を書いていて
(いずれも興味を持ち購入したまま未読)、
そうした本のタイトルからは、
枠に囚われず、枠を嫌う自由人のイメージが想像できてしまうのに、
なぜ、こんなタイトルの本を書いたのか、それが違和感の原因でした。
著者に言わせれば、破天荒に見える芸術家でも、実は、事務をしっかりやっていたとのこと。
ここは異論のあるところかもしれませんが、
少なくとも著者は、若い頃から、好きなことだけをして生きて行けるように、
そうした事務に取り組んできたおかげで、好きなことだけをやって収入を増やしてきたそうです。
夢を実現するには、実は、スケジュール管理とお金の管理という事務が大切ということを、
擬人化された「ジム」という居候と著者との対話を通して明らかにしていきます。
たとえば、いまの1日24時間をどう過ごしているかの円グラフと、
10年後の希望する24時間の円グラフを書き対比して、
収入を含め、その差をどうやって埋めていくかを考えるのです。
このやり方は、他の自己啓発書より、わかりやすく説得力があり、しかも漫画ですので、
あまり本を読まない人にもオススメできます。
ちなみに、著者は自殺者を少しでも減らしたいとの思いから、
2012年から「いのちの電話」ならぬ「いのっちの電話」と称し
自分の携帯電話番号(090-8106-4666)を公開。
死にたいと思う人からの電話を受け付けています。
その数いまや年間1万人以上。やはり、どう考えても常人ではありません。
ますます著者のことを知りたくなり、他の本も読みつつあります。
tomeさん