11月に64歳の若さで亡くなった落語家桂雀々さんの自伝。
29年ぶりの実母との対面の場面から始まるこの本は、ほのぼのとした人情噺になるのかと思い読み始めた。
とんでもない間違いだった。
母親は蒸発、ギャンブル好きの父は行き詰って心中未遂。
そんな両親に捨てられた少年は、中学3年間を一人で暮らすのだが、父親残した借金の取り立てが毎日のようにやってくる。
そんな極貧と不安の日々の中で、落語と出会った筆者は、これらを笑いとしゃべりで乗り越えて、上方の人気落語家へと成長していく。
笑いの裏にある壮絶な自叙伝だが、まったく暗さがない。
最後も、売れっ子になった息子の楽屋に来てはこれまでの経緯を豪快に笑い飛ばして帰っていく母親。
それを見送る筆者が落語の魅力を語る。
悲惨な話まで、愉快に語る筆者のバイタリティーに感動する一冊である。
だんだいさん 67歳 男性