人生に於ける様々な選択や分岐点によって、どちらを選んだか、もしくは選ばされたかによって人の一生は大きく変わってくる。
この短編集の主人公達は、世間一般で言うハズレ籤(くじ)を引いた人の物語であり、そうは言っても生きていくしかない、大丈夫になるまで生きるしかないと思っている。
2019年出版の小説だが、現在の日本はまだこういった課題を解決出来ていないし、もっと悪くなっているかもしれない。
ラストには、救いをそれぞれ与えて結末を結ぶのがアリがちな手法だが、作者の朝井リョウ氏はリアリストの如く、安易な答えなど読者に用意していない。長く暗いトンネルの中にいる人には気が滅入るかもしれないが、最後の「籤」という短編によって、勇気を与えられる人は少なくないと思います。それは、ハズレ籤を選んだか選ばされたことが無い人に欠けている、一生の宝とも言えるものを教えてくれるからである。

みーちゃんさん 55歳 男性