「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」の短歌でおなじみ、
1987年に歌集『サラダ記念日』で一躍時の人となって早40年近く。
その後、自ら切り開いた口語短歌というジャンルをリードし続けてきた言葉の達人は、
言葉の力こそ、生きる力であると言います。
現代は、画像や動画の時代のようでいて、実はSNSの普及により、
文字によるコミュニケーションの比重が増しているからです。
本書は、実体験にもとづき、さまざまな場面での言葉の使われ方を考えた、
気軽に読めるエッセイ集。
以下、印象に残ったフレーズや短歌(〇印)などを、箇条書きでピックアップしてみます。
・スマホは、コミュニケーションの拙さを増幅する装置(!)
〇「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ
・演劇はダイアローグ、短歌はモノローグ
・ラップも短歌も言葉のアート(共通性が多く、短歌はラップに大いに学べる)
〇むっちゃ夢中とことん得意どこまでも努力できればプロフェッショナル
・言葉は、持たざる者が生きるための最後の武器
・どんなに当たり障りのないツイートも、拡散されるとクソリプがくるという法則
(クソリプに学ぶその8類型/作ったのは別人で著者が引用)
〇やさしさにひとつ気がつく ×でなく〇で必ず終わる日本語
・歌会のススメ(自分の発した言葉が、どう人に伝わっているかが確認できる機会)
・平安時代では和歌は最重要のコミュニケーションツールだった
・言葉から言葉を紡ぐならAIもできるが、心から言葉を紡ぐ時、歌は命を持つ
→1から100より0から1を
〇なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き
・谷川俊太郎は俵万智に初対面で「あなたは現代詩の敵です」と言った
・定型を手放すところから出発するのが現代詩、定型を信じるところから出発したのが現代短歌
・言葉は疑うに値する/言葉と世界とは絶望的にズレがある(谷川俊太郎)
テレビ番組『プレバト!』を始めとする夏井いつきさんの活躍により、
俳句ブームとなったようですが、短歌も、著者の地道な活動のおかげで、
負けず劣らずブームとなっているようです。
本書は、改めて、言葉・短歌・日本語の、面白さ・奥の深さを認識させられた、
万人にお薦めしたい好著です。
tomeさん



