無人島に生きる十六人/須川邦彦(1948年、2003年文庫化)
青空文庫で読めますが、新潮文庫のデザインが好きです。

若い頃の著者と、中川船長との会話から物語は始まります。
明治31年、龍睡丸は大嵐に遭って太平洋で座礁。16人の男達は、無人島で暮らすことに。
飲み水や火、食事はどうする?どうやって助けを求める?果たして日本に帰れるのか……。

実話だけども、愉快で暗くない!
島暮らしをするにあたって、ルールを決めた。例えば、「できない相談をいわないこと」。
日本人の名誉と信用にかけて・・・というのが戦前らしいところですが、
とにかく自分勝手に絶望せず、できる工夫をして仲良く暮らします。

そして、全員、無事に祖国に帰国するのです。
似たテイストのフィクション作品では何人も仲間が倒れたり、悲劇的な面が強調される。実は、事実の方が愉快だったなんて!

不安定で混沌とした世の中に生きる現代人。
無人島に流されることはなくとも、16人の明治の男達から学ぶことは、たくさんあります。

昨年(2022年)に若手俳優さんのプロジェクトで、舞台化もされました(総合演出 良知真次さん)。
舞台化されることで、広く、「無人島に生きる十六人」が知られるのは嬉しいことです。舞台から知った方も、ぜひ、原作を読んでみてほしいです。

マツユキソウさん 29歳 女性