新美南吉が書いた、キツネの話といえば『ごんぎつね』が有名だが、この『手袋を買いに』は子どもに読み聞かせたい傑作です。よく晴れた冬の朝に目が覚めたらこぎつねの描写から始まります。「あっ」と言ったあと「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴ちょうだい早く早く」と母に迫りますが、それは雪に朝の日差しが反射してこぎつねの目を差した描写です。なんと新鮮なのでしょう。そしてこぎつねは人間の世界で手袋を買って戻ってきて、人間は親切だったと子どもらしい好奇心と信頼で語ります。母はそれに対して「ほんとうに人間はいいものかしら。」と考えてこの物語は終わります。新美南吉の素晴らしさがよく出ている作品です。

poohymcaさん 55歳 男性