作家など有名人の本棚を撮影した本がよく出ており、
本書も、本棚の写真集という意味では似ています。
しかし、本書には本棚はほとんど写っておらず、並べた本が写っているだけです。
その意味で、正確には、本棚ではなく、並べた本、
つまり、著者が選んだテーマにより、どんな本をどう並べたかの写真集なのです。
ちなみに、昨年(2023年)7月、名古屋の人気書店「ちくさ正文館」が閉店。
慕われた店主だった古田一晴さんも、つい先日(2024年10月10日)亡くなりましたが、
彼の選書・棚づくりは「古田棚」とも呼ばれるほど有名でした。
ジャンルや作家で分けて並べるのではなく、
ジャンルを超えて関連や傾向で棚を作っていたのです。
昔から読書家に慕われる書店は、どこも本の並べ方に個性や魅力があり、
それに惹かれて、予想もしない本に出会い買ってしまうことが、愉しみのひとつでもありました。
本書は、それとは多少ニュアンスは違い、敢えて無理に選択しているきらいもありますが
(だからこそ『おかしな本棚』?)、
本の並び方やグルーピングをネタに、著者の思いを開陳しているエッセイ集ともいえます。
以上は、本書のあらましですが、実は、この本を取り上げようと思ったきっかけは、
以下の一節に出会い、激しく共感したことにあります。
ちょっと長いのですが、引用しておきます。
「うちの本棚には、まだ読んでいない本がたくさんある。それが何よりも嬉しい。
ぼくにとって本棚とは『読み終えた本』を保管しておくものではなく、
まだ読んでいない本を、その本を読みたいと思ったときの記憶と一緒に並べておくものだ。
「この本を読みたい」と思ったその瞬間こそ、この世でいちばん愉しいときではなかろうか。
それをなるべく引きのばし、いつでもそこに『読みたい』が並んでいるのが本棚で、
その愉しさは、読まない限りどこまでも終わらない。
永遠につづいてゆく。何と素晴らしい本棚。」
以前、『積読こそが完全な読書術である』という本をご紹介しましたが、
相通ずるところがあります。
ただ、「いつでもそこに「読みたい」が並んでいるのが本棚で、
その愉しさは、読まない限りどこまでも終わらない」というのは、私の場合ちょっと違っていて、
時間が経つと「読みたい」理由を忘れてしまうこともあるのです。
そこで編み出した私の読書法は、
買った本は、必ずその日のうちに、5分でも3分でも読むこと。
そうすると、積読にしても、記憶の断片が残り、改めて手に取るフックとなり、
「読みたい」理由を忘れてしまうことも、ほとんどなくなります。
なお、著者のクラフト・エヴィング商會とは、
デザイナー・著作家である吉田篤弘と吉田浩美の二人からなるユニット名です。
tomeさん