いまや、競争こそが社会を良くするという新自由主義的な考え方が、
日本にも根付いています。
そこでは、一応誰にでもチャンスはあることになっていますが、
仮にそうだとしても、勝者になり「成功」をつかみ取れるのは、一握りの人間だけ。

一握りの人間になれたとしても、つかみ取った成功とは一体何でしょうか?
たぶん金・地位・名誉などでしょうが、競争に終わりはなく、
それらを維持するためには、絶え間ない競争を勝ち抜かねばなりません。

自己啓発本の多くは、単なる競争の勝者を目指すのではなく、
自分なりに目標を設定し、それを達成する方法論を説いています。
たしかに、それなら他者との競争に左右されず、すべては自己との戦いに。
言いかえれば、ナンバー1を目指す戦いからオンリー1を目指す戦いになり、
価値基準も相対評価から絶対評価になります。

しかし、まわりに影響されず自分なりの目標を設定・維持することは、意外と大変。
目標が達成できても、その後新たな目標設定がうまくできるかどうか。
いくら努力しても、病気・事故・災害など不可抗力による障害もあります。
目標の設定と達成だけで、真に成功できるとは限らないのです。

そこで必要になってくるのが「勝者の思想」でも「達成の思想」でもない
本書で著者が提唱している「成長の思想」という考え方です。
夢や志に向かって困難と格闘することで人間として成長でき、
また、成長して素晴らしい人物になることよりも、
1日の成長こそ目指すべき成長だと主張します。
人生はいつ突然終わるかわからないからです。

成功は結果ではなく実はプロセス。
そう考えると、たしかに1日1日を悔いなく成長して過ごすことが、
実は真の成功なのだと得心できます。

tomeさん