少年少女向けの偉人伝では数多く取り上げられてきたものの、成人用の書ではなぜかポッカリと取り残されてきた偉人──ノルウェーのフリチョフ・ナンセン。

19世紀末にフラム号で北極海を漂流して北極点に接近した探検家であることは、ナンセン自身による「漂流記」も和訳されていることもあり比較的よく知られていますが、元来は科学者であり、さらに平和主義・人道主義の立場から国際連盟の結成に尽力して「難民の父」と呼ばれ、1922年ノーベル平和賞を受賞したことを知る日本人は多くないと思います。

著者は国際基督教大学(ICU)教養学部教授で、国際法学や国際関係論を専門として、あらゆる角度からナンセンについて研究し明晰かつ公平に述べています。ロシアによるウクライナ侵攻やスーダン国内の武力衝突などで世界中が不安で揺れている今日、ナンセンの言葉を聞き行動を知ることは、とても重要です。まさに、待望の書が今の私たちに与えられたと言えるでしょう。

ラベンダー・オラフさん 67歳 男性