自称「歴史探偵」、主に昭和史に関する著作を多数残し、
2021年に90歳で亡くなった半藤一利さん。
保阪正康さんとともに、編集者出身の在野の歴史家として、
昭和100年を迎えた今、その存在は、ますます大きくなっていると感じます。
資料を緻密に調べ上げ、多くの関係者に丹念に取材する姿勢も、2人に共通しています。
それだけに本書でも、当時の政治家や軍人たちの会話や性格も、生き生きと再現され、
500ページを越す厚さはありますが、飽きさせません。
そもそも、寺子屋として17回に渡って語られた音声をもとにしているため、
文章としても、楽しくわかりやすく、歴史がちょっと苦手な人にも、勧められます。
内容としては、軍部の暴走と国民のナショナリズムに加え、
さまざまな偶然や事件が積み重なり、
無謀な戦争に突入していった軌跡が丁寧にたどられています。
特筆すべきは、「むすびの章」として最後に、歴史にどう学べばいいのか、
昭和史の20年がどういう教訓を私たち示してくれたかを、
半藤さんなりに5つ提示していること。
国民的熱狂をつくってはいけない、日本型タコツボ社会における小集団主義の弊害、
対症療法的な、すぐに成果を求める短兵急な発想などなど。
世界的にも、むしろ戦争が拡大し、戦後80年の平和も持続可能ではなくなってきたからこそ、
その言葉をかみしめ、私たちのあり方を再考するきっかけとしたいものです。
ちなみに、続編として『昭和史 戦後編 1945→1989』も出ています。
tomeさん