経済教養小説!と帯に書いてあります。といっても、非常に分かり易く書かれていて、学生に向けて書かれたような印象すらします。
洋館の屋敷に住む初老の男性が、アメリカの投資銀行の東京支店に勤めている女性と、その女性を屋敷に道案内したとんかつ屋の中学生の息子にお金の謎などについて話をしていきます。多くはアドラー心理学の「嫌われる勇気」のような対話形式で構成されています。
私が共鳴した部分は、社会格差が広がったと言っても、今の大金持ちは格差是正の為に仕事をした人たちで、スマホは誰でも持っているし、ネット通販や検索エンジン、SNSもみんなが使っている。それを作った人が大金持ちになっているということや、日本は国債を発行し続けて、日本政府は負債を未来の人に背負わせているという少年の言葉に対して、政府の負債の分は、今の人達の預金になっているだけという話。そしてお金のことを考えずに社会を俯瞰して見ると、みんな誰かのために働いているのであって、お金の為に働いていると思うから孤独を感じるということ。それと、愛って常に時差があって届くものであり、時差があるからこそ、未来に続いていくものだという女性の台詞です。
人間も捨てたもんじゃない、と思わせてくれる良書です。
みーちゃんさん 54歳 男性