哲学は全然詳しくないのですが、興味が湧く、ありそうでなかった本に出会いました。
タイトルは『いま世界の哲学者が考えていること』。
当然、プラトンやカントなど、19世紀以前の哲学者は登場しません。
単なる哲学入門でも哲学史でもなく、20世紀以降における
哲学の潮流(ポストモダンとその後)を踏まえた現代哲学入門と言えそうです。
本書は、まずは第1章で、現代哲学を、19世紀までの意識を分析する認識論的展開から、
20世紀の言語を分析する言語論的展開、そしてポスト言語論的展開へと、
おおづかみにシンプルに表現しています。
ここを読むだけでも、「ポストモダン」をめぐるややこしい話なども、
なんとなく見えてくる気がします。
さらに2章以降では、「IT革命は人類に何をもたらすのか」
「バイオテクノロジーは『人間』をどこに導くのか」「資本主義は21世紀でも通用するのか」
「人類が宗教を捨てることはありえないのか」「人類は地球を守らなくてはいけないのか」
の5つの問いに、哲学者や思想家たちが、
どう取り組み考えているのかを、わかりやすく整理しています。
私たちが思っている以上に、哲学が人間存在への問いを超えて、
社会の様々な課題・問題に取り組み、
根源的・全体的な視点から答えを導き出そうとしていることがわかります。
図も多用され、哲学者のプロフィールコラムや、章毎にはブックガイドも挿入され、
丁寧に編集された好感のもてる本です。
なお、本書は2016年の発刊で、そろそろ改訂版がほしいところですが、
調べてみたら、2023年に文庫となり、
第7章として「リベラル・デモクラシーは終わるのか」が増補され、
トランプ・コロナ禍・ウクライナ問題にも言及されていました。
tomeさん