日本という国は、同調圧力が強く、何かと「空気」が重んじられる国で、
「空気を読め」とか「KY」(空気読めない)という言い方も、以前、随分はやりました。

しかし、この「空気」のおかげで、生き苦しいと感じている人は少なくありません。
そこで、「空気」とは何なのか、それにどう対処していけばいいのかを、
若い人向けに解き明かしたのが本書です。

そもそも「空気」とは、「世間」が「流動化」したもの。
わかりやすくいえば、「世間」がくだけて日常的になり、
いろんな場面にいろんな形で現れるようになったもの。では「世間」とは何なのか。
著者は、現在または将来、自分と関係のある人が「世間」であり、
関係のない人が「社会」だと説明しています。

たとえば、電車に駆け込んで、同行の友人のために席取りをするおばちゃん。
このおばちゃんは、自分に関係のある人を大切にしていることはわかりますが、
他の乗客のことは考えていません。
彼女にとって、友人たちが「世間」であり、他の乗客は「社会」なので、無視できるのです。
電車の中で化粧をする女性も、一般の乗客は知らない「社会」なので、無視できている訳です。

是非、知っておきたいのが「世間」の5つのルール。「①年上がえらい 
②「同じ時間を生きる」ことが大切 ③贈り物が大切 ④仲間外れを作る ⑤ミステリアス」。
④は、ひとつにまとまるために、
意識的にも無意識的にも、内と外の線引きをして、外を排除してしまうこと。
外国人排斥など、右翼的倫理と相通じるものがあります。
⑤は、謎の慣例が横行するなど、理屈を超えているということ。

「世間」や「空気」と戦うことにエールを贈る本書は、
著者の『「空気」と「世間」』(講談社現代新書)を若い人向けに書き直した入門編。
今回あえてこちらをご紹介しましたが、
より詳しく専門的に知りたい方には、そちらの方をおすすめします。

tomeさん