言わずと知れた岡倉天心著。「茶室は寂寞たる人世の荒野における沃地であった。疲れた旅人はここに会して芸術鑑賞という共同の泉から渇をいやすことができた。」と書いている通り、茶の精神とは、茶を味わうだけでなく、茶室に入るまでの庭にどんな花が見られるか、にじり口には帯刀しては入れない平和と安心の心、器や掛け軸、生花まで、主客協力して生み出す芸術空間ということだ。これは音楽や絵画、文学でも同じことなのだが。芸術と宗教がいかに人が生きるのに不可欠なことか知ることができる一冊。
poohymcaさん 55歳 男性