いまやテレビでもよく見かける元明石市長の泉房穂さん。
ともすると激しくなる口調は、好き嫌いが分かれそうですが、
この本を読むと、その熱情の真意を理解することができ、
信頼に足る人であることが実感できます。
政治家になろうと決意したのは、なんと10歳のとき。
障害のあった弟が、理不尽な扱いを受けてきたことから、
弱い人のためになる社会に変えたいと痛感したのが原点なのです。
貧困な漁師の家庭に育ったのですが、猛勉強して東大へ。
教育学科を卒業後、NHK・テレビ朝日を経て、
衆議院議員の石井紘基氏の著書に感動して秘書になります。
しかし、石井氏が選挙に落選。
引き続き秘書として支援したい旨を氏に告げると、
「君はまだ若い。いい政治家になるには、
世の中のことをもっと知っておく必要がある。
弁護士になって明石に戻り、本気で人のために尽くしなさい。
いずれ君は政治家になる。40歳くらいだろう。
その前にまずは弁護士になりなさい」と強い説得を受け、
それに従い弁護士になるのです。
4回目の挑戦でようやく司法試験に合格。
氏の言葉通り、2000年に明石で法律事務所を設立し、
市民のために尽力。
2002年には、なんと石井氏が暗殺されたことから、
その遺志を継ぐよう周囲から説得され、衆議院選挙に立候補。
小選挙区では落選するも比例で復活当選。
こうして奇しくも40歳のとき、政治家の道を歩み始めます。
「犯罪被害者基本法」の成立などに尽力しましたが、次の選挙では落選。
明石に戻り弁護士としての仕事を再開し、
2007年には、社会福祉にもっと詳しくなりたいと
社会福祉士の資格も取得しています。
そして、2011年、遂に明石市長選に立候補。
自民党も民主党も業界団体もすべてが支援する候補相手に、
市民を信じ、市民だけを支持母体に、
69票差の接戦を勝ち抜いて明石市長になったのです。
それから3期12年の泉さんの活躍は、
誰もが認めざるを得ない素晴らしい結果を生み出しました。
「子ども」から始めれば「経済」も回ることを実証し、10年連続人口増を実現。
明石市を全国に名だたる人気都市に生まれ変わらせたのです。
明石市長を引退してからは、多くの著者を書き、私も何冊か読みましたが、
暴言問題で引退する直前に書かれたこの処女作が、
氏の政策の基本的考え方に加え、来歴やバックボーンも丁寧に描き、
氏の実像を理解するには最適だと感じています。
tomeさん