『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で新書大賞2025を受賞し、
その後もヒット作を量産している若き文芸評論家の若者論です。
タイトルは『考察する若者たち』。「本を読めなくなった」若者たちが、なぜ「考察」するのか、
サブタイトルもないため、ちょっと違和感のあるタイトルですが、
巷では、映画や漫画を解説する「考察動画・考察記事」が流行っており、
その意味で「考察」が使われていることを知り、少し納得した次第です。
本書では、まず「考察」を、作者が提示している謎を解くこと(正解がある)とし、
そこには報われるゴールがあるとしています。
これに対し、従来の「批評」は、作者も把握していない謎を解くこと(正解はない)であり、
そこには報われるゴールがないと明確に対比してみせるのです。
たしかに、作品に対して「深読み」して、新たな解釈を生み出すのは、知的興奮を伴い、
批評の醍醐味でもあります。
しかし、時代は「批評から考察へ」。
いまやコスパ・タイパを重視し、若者は最適解ばかりをを求めるようになっているようです。
著者は、そこからさらにトレンドの変化を、「萌えから推しへ」「ループものから転生ものへ」
「自己啓発から陰謀論へ」「やりがいから成長へ」「メディアからプラットフォームへ」
「ヒエラルキーから界隈へ」「ググるからジピるへ」「自分らしさから生きづらさへ」と
計9つも描き出しています。
中にはピンと来ない部分もありましたが、大きなトレンドを多面的に捉えているようでもあり、
それぞれのトレンドが連動する部分も感じました。
トレンドはそうでも、著者の立場はあくまでも批評の擁護。
最終章は「最適化に抗う」と題して、
問いを自分で作り出すことの大切さ・楽しさを訴えており、私も同感です。
ちなみに「考察動画・考察記事」を知らないオジサンにとっては、
タイトルは『報われたい若者たち』にしてもらった方が、内容的にはしっくりきますが、
若者に温かく寄り添う著者の意向から、『考察する若者たち』になったのでしょう。
tomeさん




