私事だが退職後に軽く自信喪失し冬の間に沖縄で一か月ほどぶらぶら暮らしていたことがある。2018年のことだ。

 その中で妙なものがいくつかあった。まずいまだに水素水が売ってある。EM菌牛乳とかインチキ臭い食い物がサンエー(※沖縄最強のスーパー)で平然と売られている。食料は県外のもの以外は基本安く、地産地消である。

 筆者が個人の八百屋等に行くと珍しがられる。

 へんな石碑(※石敢當)があり、町は寂れているが地主たち曰く『よそ者に貸すぐらいなら税金対策でシャッター街にしておくほうがマシ』『よそ者にアパートは貸せない』らしい。

 そもそも不動産屋には県外に生まれ育った筆者には理解不能なものがある。

『軍用地』

 軍用地はわかる。
 わかるが資産運用商品になっているのはよそ者には心情的に理解しがたい。

 沖縄の地権問題はいまだ解消しておらず、政府はその申請をいまだ求めているそうだ。

 沖縄の企業を支援するところを見てきた筆者はその前向きな空気の中、微妙な違和感を覚えていたかもしれない。
 もちろん沖縄の気候は大変よろしく、やや鬱状態だった筆者にはのんびりとニート生活できたことは否めないが。

 さて、沖縄は筆者もモノレールの広告で見たが自動車を皆が使っているのに自動車保険に入っていない人間ばかりらしい。

 沖縄で自転車に乗るのは子供くらいしかいない。商店街に放置しても警察は動かない。それくらい放置自転車そのものが珍しい。自動車のほうが圧倒的に便利だからだ。

 警察にあうことはあまりない。交番がそんなにない。
 筆者は一度落とし物を届けていただいたことがある。
 当時のかたありがとうございます。
 しかし那覇の観光地ど真ん中でなくばそもそも交番まで歩いていくことができない。

 筆者が見た限りでは結構警備会社が施設警備などをしている。

 警察はなんか大捕物している感じで『日本最強ヤ●ザ』とされる大阪府警と違って良くも悪くも地域密着の印象がない。代わりに米軍のひとがなんかのんびり自転車乗っていたりする。米軍でも自転車に乗るのは変わり者の趣味っぽい印象がある。それくらい自転車がない。

 代わりに車椅子のひとや障碍者のひとが元気に買い物している姿を散見した。結構街中の中心部にそういう施設があったので県外の筆者からみてもそれは見習うべきだろう。

 沖縄は貧困率全国一位らしい。
 のんびりとした雰囲気に反して犯罪も多い。今だ米軍の関係者が引き起こす犯罪も発生している。

 本書は沖縄生活を通して『沖縄』というミクロの視点から『日本全体』の問題点を問う。

 無気力を超えて無感動な学生たちは利己的でわがままなはずだ。なのに本当は自己評価が恐ろしく低い。
 少しでも『できるやつ』とされることは社会から隔絶され、辱められることを意味する。
 沖縄ではなくとも現場仕事で本を読んでいたら『勉強しているのかい』となぜか馬鹿にされた方はいらっしゃるかもしれない。

 皆が商売していて商店街とも住宅街ともつかずどうやって住民の生活が成り立っているのかな大阪の十三周辺も結構疑問な地域だが、沖縄だと商店まで歩く歩くめっちゃ歩いた。それでやっと買い物できる。車買えとなる。

 それでも商売が成立するのは競争ではなくコネクションが大事だからである。

 困ったことがあればお互いがお金を出し合う社会だが逆に言えばお互い依存している。

 経営者の仕事は利益を上げることではなく国から補助金を巻き上げることである。

 働かないのではない。働けない。有能と思われれば排除される。
 愛しているというより、依存している、貢献しているとされなくば生きていけない。そしてDVに耐える。

 基地を憎むのに、基地を取り払ったら県外企業のさびれたモールくらいしか作れない。
 実際、アメリカ軍は本当は基地を縮小したいらしい。

 こういった各種の問題を通して、『実は沖縄固有ではない、日本社会が抱える根本的な足の引っ張り合いの問題』を描いて見せるのが本書だ。

 かつてアメリカ軍から盗賊行為を働いた方々はセンカアギヤーと呼ばれ英雄視されたが、その夢のあとは虚しい。

 まず、自分を愛せと聖人は云う。

 それは利己的にふるまうことではない。
 自分を捨てて利他をすることでもない。
 ヒトを幸せにするならばお互いの愛と感謝が必要だ。

 それを知らずに育つから人は悲しい。
 愛すること。自分を信じ真実から目を逸らさず情報を精査すること。
 詭弁や愚行から正しく距離を置くこと。
 この本はそれができない心の貧困に我々が陥っていないかを正しく問う。

 是非一度、ご覧ください。
 自らを正義としてお互いたたき合う現代、一つの指標を示してくれるはずです。

鴉野 兄貴さん 男性
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