「東の流山、西の明石」という言葉があります。
子育て支援策を充実させ、人口の大幅増を実現した自治体としてと言われている言葉です。

兵庫県明石市については、以前元市長である泉房穂氏の『社会の変え方』をご紹介しましたが、
本書は、千葉県流山市在住30年の元日経の記者が、丹念に取材して、
流山市の魅力と秘密に迫った本です。

泉氏は、2011年~2023年の3期12年で市長を引退しましたが、
流山市長の井崎義治氏は、2003年の就任以来、すでに6期目の現職市長です(2025年現在)。

もともと都市計画コンサルタントだった井崎氏は、
ゴミ焼却施設を新設インターチェンジのそばに建設する計画に対し、
市のイメージダウンになると反対し市長選に立候補。
このときは落選しましたが、4年後の2003年に大差で勝利。

以来、全国初のマーケティング課を設置し、年功序列の人事も廃し積極的な人材登用を実施。
駅名の変更や、大型ショッピングセンターの誘致も実現。
「母になるなら、流山市。」のキャッチフレーズのもと、保育環境を大幅に改善させ、
6年連続で人口増加率1位を達成しました。

こうして「千葉のチベット」と揶揄されていたのが、
「千葉のニコタマ」とまで言われるようになったのです。

本書は、「市議になるなら流山」「起業するなら流山」「野菜買うなら流山」など、
ジャンル別に、市の発展に活躍した人物を中心に描いており、
流山の魅力を多角的に明らかにし、読み物としても十分楽しめます。

保育士を厚遇しているせいか、市の保育料が高いとか、
送迎保育ステーションに予算をかけ過ぎだとか、多少の批判もあるようですが、
2022年の市長選では、調べてみたら、3人で争いながら得票率は50%超。
その実績は市民からは十分評価されていると言えそうです。

いずれにせよ、人口減に悩む自治体が多い中、
わかりやすく「流山モデル」を理解できる読み物として、
まちづくりに関心のある人にはもちろん、多くの人にお薦めしたい1冊です。

tomeさん

流山がすごい (新潮新書)

流山がすごい (新潮新書)

大西 康之 / 新潮社 / 2022/12/19