タイトルを読むだけで、本書が「究極の書評本」と言えることがわかります。
そのタイトルとは『21世紀の暫定名著』。
「20世紀の名著100冊」や「昭和の名著」といった企画は、いくつかあるようですが、
古典が中心になりがち。
これに対し、本書は2015年段階で、気の早いことに、
21世紀の「暫定」名著を選ぼうという趣向で、
これなら、将来「古典」になりそうな現代の名著に出会えます。
文芸誌『群像』の2016年1月号で特集された同タイトルの記事をもとに、
新原稿を加えて再構成されました。
帯の言葉は「100年後も輝き続ける真の名著はこれだ!
知の最前線で活躍する第一人者たちが選び出した、
21世紀を生き抜くための新しい道標!」というもの。
登場する有識者は、内田樹・松岡正剛・佐藤優・上野千鶴子・中島岳志・白井聡・
荻上チキ・栗原康・茂木義健一郎・小川洋子・堀江敏幸・鴻巣友季子の12人。
半分以上が私が関心を寄せる人だったので、タイトルの魅力も相まって、だいぶ前ですが
手にした本でした。1人につき3冊ずつ選書していて計36冊
(すでに読んだ本も数冊ありましたが、これを読んで買い込んだ本も数冊ありました)。
本書には加えて、司会を含め各5人の参加者による3つの座談会
(一般書篇、日本文芸篇、海外文芸篇)も収録され、
さらに100冊を超える本が取り上げられています。
この座談会は、近年の出版動向を大局的に捉えており、意外におもしろく読めます。
本書で佐藤優さんは、3冊のうちの1冊に、
湊かなえの『告白』を取り上げていてビックリ。
「日本的でありながら普遍的な意義を持つ作品」として評価していたため、
これをきっかけに、当時初めて彼女の小説を読んでみました。
何をもって普遍的意義としたのかは必ずしも定かではありませんでしたが、
日頃ミステリーを読まない私にとって、「イヤミスの女王」の代表作としての
位置づけ・イメージは、しっかり印象に残りました。
tomeさん