本書は、2013年に発行された薄い3章構成の冊子で、
第1章は「維新の会」の生みの親の橋下(はしもと)支持の「謎」を追い、
第2章では「安倍政権を支えているのは誰なのか」を批判的に考察しています。
なぜ、いま頃、そんな昔の冊子をオススメするのか不思議ですよね。

その秘密は、第3章「熱狂なきファシズム」にどう抵抗するか、にあります。
著者は「観察映画」というノーナレーションの手法を生み出したドキュメンタリー映画監督。
「熱狂なきファシズム」とは、低投票率のもと、
自民党が圧勝し続ける選挙を観察して、彼が作り出した言葉です。
ファシズムというと、国民の熱狂的支持が伴うイメージですが、
いまの日本では「ずるずるじわじわコソコソ」とファシズムが進行しているというのです。

民主主義下でもファシズムが進行するのは、熱狂的支持がなくても「投票に行かない」
「政治に関心を持たない」という、消極的でもそうした「協力」があってこそです。
そして、私たちがファシズムの進行に「何もしない」ことで加担している背景は、
政治も「消費者」として消費の対象にしているからではないか、
つまり「消費者民主主義」という病に犯されていると指摘するのです。

これには、目からウロコでした。
私たちは、政治の主権者であるはずなのに、
政治が自分にどんなサービスを提供してくれるのか、という損得だけの見方をしていませんか?
まさに消費者の視点です。
そして「買いたい商品=魅力的な候補者がいないから投票しない、
投票に行くのは時間の無駄」となってしまうのです。こうして、投票率は下がり続け、
民主主義は、ないがしろにされていくのだな、ということを痛く理解しました。

ちなみに、思想家の内田樹氏は、『下流思考』という著書で、
教育現場の崩壊の根本的原因は、子どもたちが、
教育を損得だけの消費者の姿勢で受け止めていることにあると論じていて、
この指摘も慧眼ですが、それと相似形のことが政治の現場でも起きているとも書かれています。

なお、著者は、この冊子を書いた翌年に、
ズバリ『熱狂なきファシズム-ニッポンの無関心を観察する』という
さまざまな雑誌に寄稿した評論集も出していますので、
ご興味をもたれた方は、こちらも手にしてみてください。

tomeさん