栗林佐知さんの
『仙童たち 天狗さらいとその予後について』
という小説をお勧めしたい。

物語は4人の少年少女が遭難するところから始まる。

4人それぞれは、それぞれの仕方で、
遭難に関係する天狗「タマヨケ坊」と関係していく。

4人のその後の時間が美しく交差しつつ、
4人は別々の道を歩んでいくのであるが、
小説の最後には4人にとってのちょっとした
ドラマが展開されることになる。

物語のベースには、著者の文化人類学の蓄積があり、
道祖神信仰や日本の近代史への関連が多く垣間見られる。

昭和中期に始まった宅地開発や、
それに伴う社会構造や人間の心性の変化が
丁寧に描かれた本作は、どこか懐かしく、
どこか不思議な物語である。

ポンさん 39歳 女性